【質問】成年後見制度について教えて下さい。
相談者 横浜市 男性 70代 S様
最近、物忘れがひどくなり将来自分が認知証等になったときを考えて不安に思う時があります。テレビや雑誌などでたまに成年後見という言葉を聞きます。認知症などになったときに利用する制度のようですが近くにこのような事に詳しくて質問できるような人も居ないので、一体どのような制度なのか良く解りません。法律などに疎い私でも解るように教えていただけますでしょうか。
【回答】
S様のご質問にもあるように、まだまだ成年後見制度に関する認知度は十分とは言えず、特に将来認知証などの不安を抱える高齢者の方の中で制度について良く解らないという方が多いのも現実です。成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害等により判断能力が不十分な方が、様々な契約などの手続きを行うとき、ご本人の自己決定を尊重しつつ、不利な契約を結ばないよう法律的に支援し、その権利や財産を守ることを目的とした制度です。
成年後見制度には、将来判断能力が衰えたときの不安に備えたいという方のための「任意後見制度」と、既に判断能力が不十分で、いますぐ後見人等が必要な方のための「法定後見制度」があります。双方の違いはご本人がまだお元気で意思能力にも問題が無い状態のうちにご本人が将来認知証などで意思能力に問題が出た場合、この人に後見人をお願いしたいという人を決めて、あらかじめその人との間で契約を交わしておくのが「任意後見制度」で、「法定後見制度」は、既に認知症を発症して意思能力に問題が出てしまった段階で、4親等以内の親族などが申立人になり裁判所に後見人を決めてもらうという制度になります。
要するに、認知証等になったときに自分(成年被後見人)を支援してくれる人(成年後見人)をご本人があらかじめ決めておく(任意後見制度)か、認知症になった後に裁判所に決めてもらう(法定後見制度)かという違いになります。法定後見についてはさらにご本人の意思能力の程度によって支援してくれる人ができる事の内容が、ほとんどの事が出来る成年後見人、少し限定された事ができる保佐人、さらに限定された事のみできる補助人と3段階のオプションがあります。
支援する人が出来る事が制限されている保佐人や補助人のケースではまだご本人がある程度ご自分で判断能力があるという事になります。当然、当初は支援する人が保佐人でスタートしてもご本人の認知症の症状が進んでそれでは対応できなくなることも考えられますのでその場合、保佐人から成年後見人に切り替わることもありえます。
成年後見制度で後見人が出来る事は、預貯金の管理・払い戻し、公共料金の支払い、年金の受け取り、不動産の売買・賃貸契約など重要な財産の管理・処分、遺産分割・相続の承認・放棄など相続に関する財産の処分などの「財産管理」と、日常生活や病院などでの療養看護に関わる法律行為で、例えば日用品の買い物、介護サービスの利用契約・要介護認定の申請・福祉関係施設への入所契約や医療契約・病院への入院契約などの「身上監護」になります。
また、成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が低下している人のための制度ですので、身体に障害があり、日常生活に不安があるというようなケースではこの制度を利用できません。その場合、支援してくれる人が身近に居れば、その方との間で財産管理委任契約などを公正証書で作成しておくと良いでしょう。