【質問】80代の父の相続問題について
相談者 横浜市 50代 女性B様
52歳主婦です。80代の父が横浜市内に自宅土地建物とアパートを所有しています。本人はまだ元気で、今のところ土地を売る気はなく、相続についても特に対策などは考えてないようです。私は長女で、妹が一人います(45歳既婚)。もし急に父が亡くなった場合、遺言書なども無かったら土地の相続手続きはどちらが行えばよいのでしょうか。また、今後父が認知症等になった場合何か問題がありますでしょうか?専門知識が全く無いので不安です。
【回答】
ご質問の件にお答えします。B様のご質問のような事例で、まず、最初のポイントは不動産を含むお父様の全ての財産が相続税評価にしてどれくらいあるのか?という点です。
相続税には基礎控除と言って、この枠を超えなければ相続税は課税しませんよというラインがあります。したがって、亡くなられた方のその時点の財産の相続税評価額の総額が基礎控除の枠を超えた時に限り、その、超えた部分に対して相続税が課税されます。もし、B様の事例が相続税の納税が必要な事例であればその不動産が居住用にせよ事業用にせよ先ず小規模宅地特例(小規模宅地特例とは遺産の中に居住用や事業用であった宅地等がある場合、その宅地等の評価額の一定割合を減額(※最大80%)してもらえる特例です。)の適用が受けられるかどうかを検討する必要があります。この場合、対象となる不動産を誰が相続するかによって特例適用の可否が変わって来ますので注意が必要です。
また、遺言書などが無い場合、亡くなった方の戸籍調査(亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本を揃える必要があります。恐らくお父様の世代の方ですと、戸籍法が出生後途中で改正されておりますので2枚、3枚、4枚とかなり沢山戸籍を集める必要があります。)を行って相続人を確定させ、その上で相続人がB様と妹さんの二人であればお二人で遺産分割協議を行って遺産の分け方を決めます。
この場合、不動産を売却してお金で分けるのか?あるいは、どちらかが単独で相続して所有し代わりに不動産を相続しない相続人に代償金を支払うのか?共有名義にして所有し続けるのかなど色々な分け方が考えられますが、一般的に不動産の共有は将来的に当事者の人数が増えてしまい、相続関係が複雑になってしまう可能性がありますのでなるべく避けた方が良いでしょう。「土地の相続手続きはどちらが行えばよいのでしょうか。」というご質問ですが前提として遺産分割協議によって遺産の分け方などに関して当事者間の合意形成が出来ていれば、手続き自体はB様と妹さんのどちらが行っても構いません。
また、戸籍調査や相続手続きなどはB様がご自身で行う事も可能ですが、一般の方が戸籍の内容を正確に読み込んで過不足なく相続手続きに必要な全ての戸籍を揃えるのは非常に大変です。もし、少しでも不安だなと思ったら最初から専門家に依頼する方が宜しいかと思います。
「今後父が認知症等になった場合何か問題がありますでしょうか?」というご質問ですが、万一、何の対策も講じずに将来お父様が認知症になった場合、成年後見の制度を利用することになります。具体的には4親等以内のご親族が申立人になり家庭裁判所に法定後見の申し立てを行い、裁判所に後見人を選任してもらいますが、この場合、後見人が選任されるまでの間、お父様の財産を動かすことが出来なくなりますので、例えばお父様名義のアパートで空室が出ても入居者を募集して新たな賃貸契約を締結する事が出来なかったり、金融機関からお金の引き出しが出来なくなったり、様々な面で不都合が生じる可能性があります。また、成年後見制度ではお父様に後見人がついた後、アパートの営繕管理や所有している有価証券などの売買など財産の積極的な運用が原則、出来なくなりますのでその点も注意が必要です。今はお元気でも将来にわたって状況が変わらない保証はありません。お父様とも良く話し合い、早めに対策を取られる事をお勧めします。