【質問】 数年前に相続した実家とアパートが兄弟3人で共有名義になっています、実家は空き家で誰も住む予定は無く、アパートについては次男が管理して毎月の家賃は3等分で分けています。今は特に問題は出ていませんが、将来兄弟の誰かが亡くなったり、認知症になってしまった時の事を考えると不安になります。今のうちに出来る良い対策があればアドバイスをお願いします。
相談者 横浜市 70代 男性 M様
【回答】
M様のご質問の件、兄弟3人で不動産を共有されているとの事ですが、考えられる問題点として、もし、将来ご兄弟の内の誰かがお亡くなりになった場合、相続によって共有者がさらに増えてしまう問題があります。その場合、不動産の管理や処分などに関しては共有者の数が多いほど合意形成が難しくなる傾向があります。また、ご兄弟の相続に際して遺産分割協議がまとまらない、行方不明の相続人がいるなどスムーズに権利が継承されない場合は、その不動産が売りたくても売れない塩付け資産になってしまう可能性があります。また、兄弟の内のどなたかが認知症になり成年後見人が付いてしまうと、以後、認知症のご兄弟の代わりに成年後見人が共有者として権利行使の部分に関わることになりますが、その場合、空き家になっている実家の売却や、3人で共有しているアパートの修繕・管理・募集・契約・リフォームなど、アパート経営の様々な場面で成年後見制度の仕組みが関わる事になりますので手続きが煩雑になったり、思うような賃貸経営が出来なくなってしまったりする可能性があります。
このようなケースで今、出来る対策としては、贈与や売買などで共有状態を解消してしまう事が考えられますが、その場合贈与であれば贈与税が発生しますし、売買であれば購入する方の資金調達の問題や売却した側の譲渡課税の問題が出て来ます。例えば、このようなケースで家族信託の仕組みを活用して不動産を信託財産にしておけば、贈与税や譲渡課税、資金調達の問題を気にすることなく以後の共有者の拡散や成年後見制度の関与を防止することが出来ます。
M様の事例で信託を活用する場合、委託者は兄弟3人ということになります。そしてもともと委託者がもっていた権利を、家賃などを受取る権利(受益者)と所有管理する権限(受託者)に切り分ける事ができます。受託者(物件の管理・処分する権限を持った人)は兄弟のうち誰か1人が代表でなるか若しくは兄弟3人を社員とする一般社団法人などを設立してその法人が受託者になるようにします、そして兄弟3人を受益者とする信託を契約により設定します。これにより不動産の名義は受託者に一本化され、家賃などを受取る受益権は今まで通り兄弟3人で享受するという仕組みを構築することが出来ます。また、兄弟の1人が子供の居ない夫婦だった場合、通常の相続では夫の死後その共有持ち分は妻へ、妻の死後は妻側の親族へという流れになりますが、信託であらかじめ指定しておけば、夫の死後受益権は妻へ、妻の死後はM様側の家系に受益権を継承させるといった仕組みにすることも可能です。
blog記事 家族信託って何だろう? http://www.j-ssa.net/blog2016-06-27/
blog記事 家族信託で将来の不安に備える http://www.j-ssa.net/blog2016-07-01/