【質問】家族信託セミナーでのご相談・子供の居ない夫婦の家産継承と相続対策について
相談者 渋谷区 80代 男性C様
20年ほど前に勤め先を定年退職し、現在は年金暮らしです。自宅を含め、アパートや駐車場など先祖代々受継いできた不動産があります。私達夫婦には一人娘がおりましたが、若くして亡くなり現在は子供がおりません。私がもし妻よりも先に亡くなってしまった場合、妻の生活の事などが心配ですので私の財産は全て妻に残してやりたいのですが、その後もし妻も亡くなった場合は、我家の不動産は代々C家で受継いで来た財産ですから、妻側の兄弟では無く、私の兄弟(弟)に受継いでもらいたいのですが、遺言などで妻にあらかじめそれをお願いする事は出来るのでしょうか。
【回答】
ご質問の件ですが、まず、遺言によってC様から奥様にその全ての財産を相続させるという事は、全く問題なく行うことが出来ます。しかし、その先の奥様がC様のご兄弟にC家代々の不動産を遺贈するという事は、C様がご自身で遺言された場合、あるいは、C様と一緒に奥様も遺言書を作成されて、奥様の遺言にC様の弟さんに遺贈するというような内容を書かれた場合でも、実際には、C様亡き後、奥様がC様の遺言通り実行するかは奥様の意思にかかって来ます、また、奥様の遺言についても、その後奥様側のご兄弟やご親族が説得して遺言を書き直してしまうなどの可能性が御座いますので、民法の遺言規定を活用してC様が希望されるような家産継承の流れを確実に作るのは非常に難しいというのが現実でした。
しかし、こういった事例について、近年改正された信託法の仕組みを活用して「家族信託(家族型の民事信託)」のスキームを設計してC様の希望されるような仕組みを作る事が出来るようになりました。
この新しい信託法によりこれまでの信託銀行などが扱う「商事信託」に加えて主として家族間の財産継承の手段として家族信託の活用が出来るようになりました。これにより、これまで民法の遺言規定で実現できなかった財産継承のスキーム作りが可能になります。
blog記事 家族信託って何だろう? http://www.j-ssa.net/blog2016-06-27/
blog記事 家族信託で将来の不安に備える http://www.j-ssa.net/blog2016-07-01/
具体的には、C様を委託者兼当初受益者、弟さんを受託者、奥様をC様亡き後の受益者として信託契約を結びます。そして、奥様の死亡を原因として信託を終了させ、残余財産の帰属先を弟さんにします。これにより、C様の希望される家産継承の流れを確実に実行する事が出来ます。もし、弟さんがC様亡き後ちゃんと奥様の為に決められた受益内容を実行するかご不安な場合、お目付け役として信託監督人を付ける事も可能です。