【質問】家族信託勉強会でのご相談・ペットに遺産を遺すことは出来ますか?
相談者 川崎市 80代 男性F様
3年前に妻に先立たれ、現在、一戸建ての自宅で妻が可愛がっていた愛犬と一緒に暮らしています。家族同然のペットですが、最近になってふと、自分が居なくなったら我が家のペットはどうなってしまうのだろうと考えるようになりました。娘が一人おりますが、現在ペット飼育禁止のマンションに住んでおり娘に頼むわけにもいかない状況です。幸い老後の為に貯めておいた預貯金や自宅を売却すればある程度の金額にはなりそうです。これを、可愛いペットの為に残してやることは出来ないでしょうか?
【回答】
ご質問の件ですが、例えば、F様が、家族同然の大切なペットに、自分の財産を全てあげたいと思っても、犬や猫などのペットは法律上権利義務の主体にはなれません。ですから、いくら遺言書で自分の財産を全てペットに遺贈すると書いてもそれが実現されることはありません。
では、どうすれば家族同然のペットを自分の死後守ってあげる事が出来るのでしょうか?まず、民法の規定する、負担付遺贈や死因贈与、生前贈与などの方法で親族や信頼出来る第三者に大切なペットの行く末を託す事が考えられますが、「贈与」の場合は遺贈者と受遺者の間で「契約(贈与契約)」を結ぶことになりますので、そもそも相手が承諾するかどうかで契約そのものの成否が問題になりますし、もし贈与契約が成立しても、F様の死後、本当に贈与財産がペットの為に使われるかどうかの保証はありません。
また、「遺贈」の場合は遺贈者の「一方的な意思」で成立しますが、実際には受遺者に拒否されてしまったり、法定相続人の遺留分などへの配慮が無い遺贈になっていたりするとそれが争いの原因になり、結局ペットは行き場を失ってしまう・・・という事も考えられます。
そんな時に活用したいのが、家族信託の仕組みです。F様の死後もペットを守る信託スキームを組成しておく事により、ペットのために遺したい財産と、それ以外の相続財産を切り分ける事が可能になります。例えば、ご本人がお元気な内に、信託財産の管理団体として一般社団法人などを設立します。そして、ペットの為に残したい財産をその社団の信託口座に入金し、自分が入院などで動けなくなった場合や、自分の死後もそこから新しい飼い主にペットの飼育費用が支払われるような仕組みを創ることが出来ます。また、信託を組成した行政書士や司法書士などの専門家に信託監督人を依頼して適切にペットの飼育が実行されているかをチェックする事も可能です。
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