【質問】親が現在80代でそろそろ相続の問題も考えなければと思っています、特に相続税の事などが心配です。
相談者 横浜市 50代 男性 K様
横浜で会社経営をしています。数年前に父が亡くなり、現在実家に母が一人で暮らしています。兄弟は私と妹の二人で、二人とも結婚してそれぞれ持家で生活しています。最近よく相続問題がTVなどで取り上げていますが、実家は代々土地を多く所有している地主で、もし、急に母が亡くなった時に相続税などが払えるか心配です。やはり今のうちから土地を売るなどして早めにお金を用意しておいた方が良いのでしょうか?
【回答】
K様のご質問の件ですが、相続税は、遺産の総額(相続税評価額)が相続税基礎控除を超えた時に、その、超えた部分に関して課税され、税率は10%から最高55%までとなります。基礎控除は3000万円プラス600万円×相続人の数となりますので、K様の場合4200万円が基礎控除となり、相続する遺産がそれを超えた時にその超えた部分に対して相続税が課税されます。ですから、その判断基準としては、お母様のお住まいになっているご自宅や所有されている不動産の相続税評価額(一般的に市場で取引される価格よりも通常3割程度低い価格になります)と、預貯金や有価証券などの金融資産、車や宝石、書画骨董などの動産など全ての相続財産の価格の相続税評価額の合計がいくらになるのかが判断基準となります。
もし、合計額が基礎控除を超える場合、特に不動産の評価については注意が必要です。一般的に相続税の納税が必要なケースで例えばK様がご自分の会社の顧問税理士などに相続税の申告を依頼された場合、税理士さんイコール相続税申告に慣れている、または、精通しているという事ではありません。むしろ、大半の税理士さんは会社の税務申告などの業務を主力業務として取り扱っています。
また、相続税の納税が必要なケースにおいて不動産の評価と言うのは非常に重要な要素ですが、税理士さんが全て不動産の事に関して精通しているかというとそんなことは無くて、むしろ、不動産の事に関してはあまり詳しくないという方が多いのではないでしょうか。例えば、一般的に相続税の申告において税理士さんが不動産の評価を行う場合、国税庁の財産評価基本通達の相続税路線価による評価という事になるケースが多いと思いますが、その不動産の立地条件や物件が内包している様々な要因によっては実際の時価(その時点で市場の通常取引において成約すると思われる価格)よりも財産基本通達に基づいて評価した相続税評価額が、時価を上回るケースも出て来ます。
例えば下記のような土地が相続財産の中にある場合はその可能性がありますので注意が必要です。
1.敷地の大半ががけ地であるなど傾斜の強い土地、
2.前面道路が極端に細く車が入らない、或は建築基準法の道路に接面してない土地など
3.土地汚染などの可能性がある土地
4.大きな面積の土地ですぐに流通しそうにない土地
5.間口が狭い、地型が不整形で利用辛い土地
6.市街地農地、山林、原野
7.市街化調整区域に存する土地
8.高圧線下や計画道路予定地を含む土地
このようなケースでは、大きな面積の土地は広大地(認められれば最大65%の評価減を受けられる制度です)の適用が受けられないか、生前贈与などを活用して少しでも節税ができないか、もし、相続発生時に新駅の建設や近隣の再開発などで値上がりが確実な土地があれば相続時精算課税制度(生前贈与の受贈者(もらう人)が贈与時に贈与税を支払い、その後の相続時にその贈与財産と相続財産を合計した価格をもとにして相続税を計算する、そして相続税からすでに支払った贈与税を控除するという制度です。
将来値上がりが見込まれる資産を贈与した場合には相続時にメリットが出ます)を活用して今のうちに贈与しておいた方が良いのではないか、など、様々な角度から検討したうえで、納税資金の確保なども計画的に行う事が重要です。
また、実際の申告時には適切な鑑定評価に基づいて実態に即した評価額に基づいて申告を行わないと本来払う必要のない過大な相続税を払う事になる可能性もありますので早めに相続や不動産の問題に精通した専門家に相談される事をお勧めします。