【質問】 相談者 町田市 60代 女性 S様
父が10年程前に亡くなり実家で一人暮らしだった母が昨年から施設に入りました。兄弟は姉と弟がおりますが二人とも関東以外の地域で生活しているので殆ど母の身の回りの事は私が面倒をみています。母が亡くなった場合遺産は兄弟で3等分と聞きましたがそれでは少し納得がいきません。母も他の姉弟より私に多めに遺産を分けたいと言って居ますが何か良い方法は無いでしょうか。
【回答】
S様のご相談のように、様々な事情から親の介護をご兄弟のうちの誰か一人が担っている事例が最近増えているようです。このような事例ではS様のお母様のように介護受けている親の側も介護をしてくれている子の労に報いる意味でもその子に他の姉弟よりも多めに相続して欲しいと思われているケースが多い様です。
しかし、いくら生前お母様がそのように思われていても何の準備もしないままお母様がお亡くなりになってしまうと亡くなったお母様の生前の意思が実現されるかどうかは遺された法定相続人の全員による話し合いの話し合いにゆだねられてしまいます。そうなるとS様がその話し合いの場でいくらお母様が生前そのようなお気持ちだったし、自分もお母様の介護の負担を一人で担って来たのだから納得出来ないというような主張をされてもそれを他のご兄弟が納得してくれなければS様が多めに相続するという事は実現されません。
ではどのような準備をしておけばお母様の気持ちも実現されてS様も納得の行く相続になるのでしょうか?この場合お母様がお元気なうちに遺言を準備されておくのが良いでしょう。お母様が亡くなった場合、その法定相続人はS様も含めたご兄弟3人という事になりますから法定相続分は其々3分の1ということになります。もし、お母様がS様の労に報いる為S様に多めに相続させたいという場合、他のご兄弟には「遺留分」という法律で定められた最低限の権利があり、自らに相続が発生したことを知ったときから1年以内であれば侵害された部分に関して「遺留分減殺請求」という申立てを行い遺留分を侵害した相手に請求する事が出来ます。ですからそこに配慮した内容の遺言にしておかないと将来もめ事にならないように遺言を書いたつもりが、遺言が揉め事の原因になってしまうという事になりかねません。
他のご兄弟の遺留分は6分の1ですから他のご兄弟が其々6分の1残りの6分の4をS様という配分まででお母様が遺言で相続分を指定しておけば、相続発生時に他のご兄弟から遺留分減殺請求など、遺留分を侵害されたことを原因とする異議申し立てを受ける事もなく遺言に従った遺産分割が可能になります。S様の事例のように親が亡くなって子供が相続する事例では遺言による相続分の指定が各相続人の遺留分を侵害していなければ他のご兄弟から遺留分減殺請求を受ける事もありません。しかし、その後のご兄弟のお付き合いや感情的なしこりの事を考えれば、お母様がS様の介護の労に報いたいというお気持ちであること、その為に遺言を作成しそれを実現できるような相続分の指定をすること、お母様はご自分亡き後も遺されたご兄弟が仲良く助け合って幸せに暮らしてほしい事などをご家族がお母様のもとに集まる機会などにお母様の口から他のご兄弟に直接伝えてコンセンサスを形成し、その事を遺言の付言事項などにも記載しておくことが望ましいでしょう。