【質問】自宅から老人ホームへの住替えについて
相談者 世田谷区 70代 女性A様
数年前に主人を亡くし、現在一戸建ての自宅に一人で住んでいます。最近足腰が弱って来て2階にある寝室と1階にあるダイニングとの上り下りや、庭の手入れなどがかなり負担になりました。子供は息子が1人おりますが、お嫁さんなどへの気兼ねしながら同居するのも嫌なので、出来れば老人ホームなどへ住替えたいと思っています。TVなどで、老人ホームは待機者が沢山居て、中々入居出来ないなどと良く言われていますが実際はどうなのでしょうか?また、どのような施設が自分には良いのかも良く解りません。もし、老人ホームへ住替える場合、自宅以外にも多少の預貯金などがありますので、自宅を売らなくても入居資金は捻出出来そうですが、最近は空き家問題が良くニュースで取り上げられています。老人ホームに入居後、自宅を空き家にしておくと何か問題がありますでしょうか?
【回答】
ご質問の件ですが、A様と同様、ご高齢になり連れ合いに先立たれ、お一人になって、ご自宅での生活に不安を抱えてらっしゃる高齢者は非常に多く、私どもでも良くご相談を受けます。
「老人ホームは待機者が沢山居て、本当に中々入居出来ないのか?」といご質問ですが、TVなどでそのように言われているのは、「特別養護老人ホーム」という施設になります。良く「特養(トクヨウ)」などと言われる施設で要介護3以上の方が申し込む事ができます。常時介護が必要で、自宅での介護が困難な人に対し、生活支援や介護サービスを提供する施設で、地方自治体や社会福祉法人が運営していますので民間の有料老人ホームに比べると比較的費用が安い事と入居希望者に対する施設の絶対数が少ない事から、入居待ちが沢山出る状況になっています。
このような特養と言われる施設から、民間の介護付き老人ホーム、認知症の方が入居するグループホーム、まだお元気な方が自立して生活する為の高齢者向け賃貸マンションであるサービス付き高齢者向け住宅、入院の必要はないが、自宅での生活に支障がある要介護1以上の人が自宅に戻るまでの間、支援を受ける施設で介護老人保健施設(老健)等々、一口に老人ホームといっても非常に沢山の種類があります。また、施設によっては希望すればすぐに入居できる施設も沢山ございます。
次に、「どのような施設が自分には良いのかも良く解らない」とのご質問ですが、先ほど申し上げましたように、老人ホームは種類が非常に多く、その施設によって提供される介護サービスの内容や対応できる入居者の内容に違いがあります。私どもでは、老人ホームの事を熟知した複数の紹介センターと業務提携しておりますので、ご相談いただければ連携して入居先の選定、ご自宅の売却、入居後ご本人を支援する法的枠組み作り、将来相続でご家族が争わない為のご提案など総合的に高齢者のお住替えを支援しております。
次に「老人ホームに入居後、自宅を空き家にしておくと何か問題がありますでしょうか?」というご質問についてですが、ポイントはいくつか御座います。まず、A様が自宅に関して、もし今すぐには売らなくても将来売るかも知れないというお考えでしたら、自宅などの居住用財産を売却した時の3000万円特別控除について着目する必要がございます。これは、本来、不動産を売却した時に課税される所得税と住民税を、居住用の不動産については売却益(買った時と売った時の差額)が3000万円まででしたら免除しますという制度です。この特例がもし使えないとすると所得税と住民税の合計は14%となりますので、仮に譲渡益が3000万円とすると税額は約420万円ということになります。この特例が受けられるか受けられないかは自宅を売却する際に非常に大きな問題なのです。
例えばA様が老人ホームに住替えをされる時に、自宅をすぐには売らずに空き家の状態にしておいたとします。そして、その後自宅を売却した場合空き家の期間が3年を超えた場合、3000万円特別控除の適用を受けられなくなる可能性が御座います。また、近年、空き家対策特別措置法が施行されましたので本来、空き家でも土地の上に建物があれば敷地の固定資産税が6分の1に減免されていましたが、行政から特定空き家の指定を受けると固定資産税が6倍になってしまったり、行政代執行による強制的な取り壊しの対象となってしまう可能性がございます。