みなさん、3000万円控除という制度をご存知でしょうか?
これは、居住用住宅を譲渡した場合に、譲渡所得から特別控除として最大3,000万円を差し引くことができるという特例です。
通常、不動産を売却して譲渡利益(売った価格から買った価格を除してプラスになった部分)については、所得税と住民税が課税されます。その税率は譲渡した年の1月1日におけるその不動産の所有期間が5年以下であれば短期譲渡で所得税30%、住民税9%。所有期間が5年超であれば長期譲渡で所得税15%、住民税5%となりますのでこの制度が使えるか使えないかは非常に大きな問題です。
この制度は従来「自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること。」というのが適用要件でした。
また、以下のようなケースは適用除外とされていました。
(1) この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
(2) 居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
(3) 別荘などのように主として趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋
ですから、非同居の家族が親の実家などを相続してそれを売却する場合、例え相続後に実家に一時居住したとしても前記(1)に該当しこの特例の適用を受ける事が出来ませんでした。
しかし、2016年度(平成28年度)税制改正大綱 では、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創設されこのようなケースでも3000万円控除の適用を受けられる事になりました。これは最近社会問題化している空き家問題に対する対策の意味合いもあるようですが、譲渡対価の額が1億円を超えるものは除外されるとしています。また、適用を受けるには条件があり、もし、相続した実家が旧耐震基準(※旧耐震基準の家屋は1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家屋の事です。)の建物の場合、建物を耐震改修して売却するか、建物を解体し更地にして売却する必要がありますので、実際に建物が古い実家などを相続したケースでは適用のハードルが高そうです。
因みに、この譲渡対価が1億円を超えるものは除外という要件を聞いて、私はとっさに、ならば2分割で売却し5000万円×2回の譲渡ではどうなのだろうか?と考えましたがさすがにそういう事は役所の側も想定しているようで、譲渡対価の判定は、相続の時から、その相続をした日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に、相続人が行った対象資産の譲渡の合計額で行うそうです。世の中そんなに甘くないですね。(笑)