【質問】曽祖父の代から続く家業の寿司店を営んでいます。息子が二人おりますが長男は大学を出て大手企業のサラリーマンになりました。その後、結婚して数年前に自分の家も手に入れて家族で生活しています。次男は高校卒業後、家業を継ぐため、寿司職人の修行に出て昨年、修行を終えうちの店を手伝ってくれておりますが未だ独身です。私の財産は自宅兼店舗の土地建物と預貯金などの金融資産です。自宅兼店舗は父の代に建替えたもので建物は古いですが店の立地が駅前の商店街に面しているため土地の評価がかなり高く相続財産評価額のかなりの部分はこの土地の評価です。私亡き後、次男が家業を継ぐ時に困らないように遺言を残しておこうと思いますがどのような遺言にすれば良いでしょうか?
相談者 渋谷区 70代 男性 O様
【回答】O様のように家業で自宅兼店舗などの不動産を含む相続財産をお持ちに方の場合、何も準備しないまま相続を迎えると、他の兄弟に相続分を主張されて不動産を売却せざるを得ない状況になり、家業の承継が出来なくなってしまう可能性があります。次男が家業である寿司店を承継するためには、少なくとも自宅兼店舗である不動産を全て次男が相続する必要があります。その際に、遺言で「次男に不動産を相続させる」という文言と共に長男にも遺留分相当の現金や預貯金などを相続させる文言を入れておけば将来のトラブルを事前に回避できます。しかし、首都圏など不動産評価額の高い地域ではO様のケースのように相続財産の大半を不動産が占めており遺産評価額の総額が膨らんでしまっている場合、家業を承継する次男に不動産だけでなく、当座の運転資金の為の現金や預貯金も相続させようとすると、長男の遺留分を満たすだけの現金や預貯金などが確保できないケースも考えられます。その場合、次男が家業を承継するためにそれだけの遺産を相続する必要があることをあらかじめ長男にも理解してもらい、遺留分減殺請求権を行使しないように頼んだ上で遺言を作成すると良いでしょう。ただし、その場合でも将来相続が発生した時に長男が心変わりして遺留分を主張する可能性は否めません。その場合、事前に長男に遺留分を放棄してもらうことも可能ですが、裁判所の許可が必要となります。