前回のblog記事で、遺言書がある場合の相続手続きについてお話しました。今回は遺言書が無い場合はどのような手続きが必要かについてお話したいと思います。ご家族が亡くなり相続が発生した場合、法的に有効な遺言があれば、原則、遺言で指定された内容に基づいて相続が行われます。遺言が無い場合、まず行わなければならないのは「相続財産の確定」と「相続人の確定」です。相続財産は土地建物などの不動産、株式などの有価証券、預貯金・現金などの金融資産、自動車、貴金属などの動産など多岐にわたりますので調査の上全体像を確定させ財産目録を作成します。その上で、確定した相続財産をどのように分けるかを、戸籍調査で確定した相続人全員による話し合い(遺産分割協議)を行い、合意内容を記した書面(遺産分割協議書)を作成します。相続の対象になる遺産の範囲は、亡くなった方(被相続人)が相続開始時に有していた財産的権利義務全て(一身に専属するものを除く)ですが、相続の対象となる遺産が全て遺産分割協議の対象となるという訳ではありません。例えば、預貯金などの可分債権や借金などの金銭債務は当然に遺産分割の対象となる訳では無く、原則、法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとされていますが、実務上は預貯金なども含めて遺産分割協議を行うケースが多いです。遺言書が無い場合、本来、法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとされている銀行預金なども実際に金融機関の窓口では亡くなった被相続人の相続関係を確定させるための戸籍や相続人全員の署名捺印のある遺産分割協議書の提示に加えて、自行の相続手続きの書式にも法定相続人全員の署名捺印と印鑑証明書の提出などを求められ、それに応じないと相続手続きを進めてくれない金融機関がほとんどです。金融機関も相続人の個別の払戻し請求に応じて後日相続人間の紛争に巻き込まれるのを嫌ってそのような対応になっているようです。
不動産についても、亡くなった方から相続人に名義を変える場合、相続人確定の為の全戸籍、確定した相続人全員による遺産分割協議書の添付を法務局から求められます。このように遺言が無い場合、遺言がある場合に比べて相続人が負う相続手続きにかかる時間や労力が格段に大変なものになってしまいます。やはり、ご本人が元気なうちに遺言を作成しておく事が遺されるご家族への思いやりなのではないでしょうか。