最近は「終活」という言葉がマスコミなどで取り上げられるようになり自分の人生の締めくくりを自分の希望通りにしたいという事で様々な事が注目されています。その中でも最近ご相談を受ける事が多いのが遺言についてです。良く勘違いされている方も多いのですが遺言は遺書とは違います。遺書と言えばTVドラマなどで自殺をする人が書き残した「先立つ不孝をお許しください・・・」的なあれです。それに対して遺言とは民法第960条に「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、する事ができない。」と規定されている法律行為です。民法の定める遺言の方式は普通方式3種類(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)と特別方式4種類(一般危急時遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言)の7種類です。一般的に使われているのは普通方式の3種類の内、自筆証書遺言と公正証書遺言です。特別方式の遺言に関しては4種類のそれぞれの名称を見ていただいた時点であまり使われる事も無いだろうなぁ・・・と言う感じを皆様も持たれると思いますが、私も日常的に遺言や相続に関するお手伝いをしたり沢山のご相談を受けていますが、特別方式の遺言が実際に使われた話はあまり聞いたことがありません。例えば、民法第979条に船舶遭難者の遺言の条文がありますが「船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人2人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。」とあります。船が遭難しようとしている船内で皆パニック状態に陥っている最中、この条文を知っていて、かつ、それを冷静に思い出し、船内で証人2人をお願いして・・・という余裕のある人は恐らく居ないのでは・・・とついつい突っ込みたくなる条文です。
普通方式の遺言の中で自筆証書遺言と公正証書遺言が一般的には良く使われていると言いました。では秘密証書遺言とはどういう遺言の方式なのでしょう?自筆証書遺言は全文、日付及び氏名を自署しこれに印を押した遺言ですが秘密証書遺言の場合署名のみ自筆であれば遺言自体は他人が書いたものやワープロやパソコンで作成して印刷したものでも構いません。そして署名捺印した遺言を封筒に入れ遺言に押したのと同じ印で封印をし、その封書を公証人及び証人2人以上の前に提出し、それが自分の遺言である事、遺言の筆記者の氏名、住所を申述します。公証人は提出された封書に提出日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者、証人と共にこれに署名し印を押す事で成立します。ここまで読んで皆様もお解りだと思いますが結局、作成にかかる手間は公正証書遺言とほとんど同じです。なのに、秘密証書遺言の場合遺言の中身については本人のみぞ知る。という事になりますから例えば折角手間暇をかけて作成したのにいざご本人が亡くなって遺言を開けてみたら方式の不備で無効、という可能性もゼロではありません。また同様に公証役場が関与して作成する公正証書遺言はご本人が亡くなって遺言の効力を発生させる時に裁判所の検認手続きが不要なのに対して、秘密証書遺言の場合は自筆証書遺言と同じく検認手続きが必要となります。自筆証書遺言も同じように開けてみたら方式の不備で・・・というリスクがありますが、費用がかからず手軽に作成出来るという利点があるのに対して、秘密証書遺言は費用も手間もかかる割に開けてみたら・・・のリスクもあり、かつ、費用も手間もかかった割に、検認手続きも必要になるというあたりが、あまり秘密証書遺言が使われない理由の一つかも知れません。もっとも我々専門家がご相談を受けてあえて秘密証書遺言が良いでしょうというケースがそもそもあまり無いという事もありますが・・・。皆様も折角自分の人生の締めくくりをどうするかを考えてご自分の死後、確実に自身の希望を形にしたいと思われるのであれば、遺言の内容については専門家にご相談をされた上で公正証書遺言を作成されるのが一番確実な方法だと思います。