【質問】 相談者 藤沢市 70代 男性 M様
親が亡くなり相続になりました。相続財産は親が住んで居た実家の相続でそうすれば良いか困って居ます。私も兄妹も持家があるので誰も実家に住む予定は有りませんがどのように相続すれば良いでしょうか
【回答】
最近受けるご相談で不動産の相続に関する話が非常に増えています。一昔前はサザエさん一家の様な3世代同居も珍しくありませんでしたが近年は核家族化が進み、M様のご相談のように親の相続が発生した時点でご兄弟はそれぞれ持家を持っていて実家に誰も住む予定が無いというケースは珍しくありません。
例えば実家の時価が6000万円として、それをA、B、C3人の兄弟で相続する場合(法定相続分は各3分の1)もし、兄弟の内、Aが元々親と同居しておりそのまま実家に住み続けたいという場合。相続の方法は「代償分割」と言って、Aが不動産を取得して、その代償としてB、Cに対して其々2,000万円の金銭を支払うという方法が一般的です。
それに対してM様のご相談の様に、兄弟の内、誰も住む予定が無いという場合「換価分割」と言って不動産を売却して、A、B、Cが其々2,000万円の金銭を受け取るという相続の方法が一般的です。相続には其々のご家庭で違った事情がありますのでどちらが良い悪いという事でもありませんが、税金の面で考えると、不動産を売却する予定がない場合は代償分割が有利で、不動産を売却する予定がある場合は換価分割が有利ということになります。
何故代償分割が有利かというと、通常相続における不動産の評価額は時価(売却金額)より低いため、代償分割の方が相続税は少なくなります。また、相続財産の総額が基礎控除を超え相続税の納税が必要な相続の場合、実家などの居住用財産の相続では同居していた親族、又は非同居でも3年以上持家に住んで居ない親族が相続する場合には相続税評価額を80%減じてもらえる小規模宅地特例の適用を受ける事が出来ます。ですので、誰が相続するか?というのも大きなポイントになります。ちなみに非同居で3年以上持家に住んでない親族が小規模宅地特例の適用を受ける事を業界用語で家なき子特例などと呼んでいますが良くあるご質問で相続人の内、実家から嫁いだ女性のご兄弟が相続人のケースで現在住んで居る家はご主人の名義なので自分は家なき子に該当しますか?というものがありますが持家の名義がご主人でも持家の実態は夫婦単位で判断されますのでこの場合、家なき子特例の適用は受ける事が出来ません。また、お父様が亡くなってまだお母様(被相続人の配偶者)がご存命のいわゆる1次相続では家なき子特例の適用を受ける事は出来ません。本来、家なき子特例とは例えば元々実家で親と同居していたけれど勤め先の転勤などで社宅や借家などに住んで居たり、本当は同居して居たいのだけれどやむを得ない事情で同居出来ないなどのケースに対する救済措置的な意味合いがありました。しかし、近年制度を逆手に取って特例の適用を受ける為に無理やり持家状態を解消したりする節税対策をする人が増えてきたことを受け平成30年4月1日から家なき子特例の要件については大幅に改正されこれまで行われていた無理やり不動産の名義を変えて特例の適用をうけるなどのやり方が出来なくなりましたので、それが出来る前提でこれから遺言の作成を検討されている方は注意が必要です。