【質問】数年前に親が亡くなり世田谷区内の実家とその他不動産、預貯金などを相続して、相続税を約3000万円程支払いました。私には持ち家がありましたので実家に住む予定も無く、空き家の状態で何となくそのままにしています。最近空き家問題が良くTV等で取り上げられていますが何か問題はありますでしょうか。
相談者 世田谷区 60代 男性 H様
【回答】
H様のご質問の件ですが、相続税の納税をされたとの事ですので、まず確認して頂きたいのは相続開始から現在まで何年何カ月が経過したか?です。H様には持ち家があり、住む予定が無いとの事ですので、もし、最終的には売却されるというお考えでしたら相続開始から3年10カ月以内に売却される事をお勧めします。
その理由は、H様は相続税を納税されたとの事ですので「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を使って譲渡課税の軽減を受けて頂きたいからです。
仮に、H様の相続した遺産が土地3か所合計1億円、その他の財産5000万円で相続税を3000万円支払われたとします。今後、実家を売却される場合、譲渡利益がでれば所得税と住民税が課税されます。仮に実家を6000万円で売却される場合の譲渡課税の課税対象となる金額のイメージは以下の通りです。
(譲渡所得課税のベースとなる譲渡利益の算出イメージ)
(取得費加算が無い場合の譲渡所得計算例)
実家の売却価格 6000万円-(実家の取得費300万円+実家の譲渡費用300万円)=譲渡利益5400万円(取得費加算が無い場合の譲渡所得)
これが相続開始から3年10カ月以内で「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」の適用期間内に譲渡した場合は以下のようになります。
(取得費加算額の計算例)
相続税総額3000万円×実家の売却価格6000万円/遺産総額1億5000万円=取得費加算額1200万円
(取得費加算が有る場合の譲渡所得計算例)
実家の売却価格 6000万円-(実家の取得費300万円+実家の譲渡費用300万円+取得費加算額1200万円)=譲渡利益4200万円(取得費加算がある場合の譲渡所得)
このように、取得費加算の有無で譲渡課税の課税対象となる譲渡所得が1000万円以上違って来ます。また、これに加えて2016年4月から、H様のように相続した空き家を売却する場合でも、3000万円の特別控除の特例の適用を受けられる事になりました。ただし、適用を受けるには条件があり、もし、相続した実家が旧耐震基準(※旧耐震基準の家屋は1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家屋の事です。)の建物の場合、建物を耐震改修して売却するか、建物を解体し更地にして売却する必要があります。このように、相続した実家などを売却する場合、様々な制度の適用要件などの検討や売却時期などに注意する必要があります。
相談事例(相続した不動産を売却・・)http://www.j-ssa.net/q10/