先日、法務大臣の諮問機関である法制審議会の民法部会は21日、相続で自宅退去を迫られる可能性のある配偶者の居住権確保などを柱とした中間試案をまとめたというニュースが報じられました。中間試案の内容を見てみると、遺産分割協議中も配偶者が無償で自宅に住み続けられる「短期居住権」、自宅の所有者が変わっても安価で住める「長期居住権」などを新設する。また、配偶者と子供の組合せで現在2分の1となっている、配偶者の法定相続分についても、3分の2まで引き上げる案が盛り込まれているようです。そうなると現在配偶者と子供2人の相続で配偶者2分の1、子供一人あたり4分の1の相続分が、配偶者3分の2、子供一人当たり6分の1という相続分になります。また、相続権の無い息子の嫁などが介護などを行った場合、相続できるようにする案など、現在実際の相続の場面でありがちな事例も試案の中には盛り込まれているようです。
配偶者の相続と言えば、1億6000万円の配偶者控除があります、どのような制度かと言うと。「法定相続分の額 ≦ 1億6,000万円」の場合は実際に相続した財産の額が1億6,000万円以下ならば非課税。「法定相続分の額 > 1億6,000万円」の場合は実際に相続した財産の額が法定相続分の額以下ならば非課税という相続税の優遇措置です。これによりご主人が亡くなり奥様が相続するような配偶者相続のケースではこの制度の恩恵により相続税を支払わなくても良いケースがかなりあります。一見、配偶者が相続人に居る一次相続ではこの配偶者控除の恩恵に期待して配偶者が最大限この制度の枠を利用して相続するのが得策のような気もします、しかし、その後の2次相続まで含めてシュミレーションしてみると、1次相続で配偶者が控除枠一杯に相続するのではなく子供達にも応分の相続をさせておいて、2次相続で子供達が相続する遺産の総額を基礎控除の枠に収まる、又は、超える額をなるべく少なく相続する方がトータルの相続税負担が少なくなるケースもあります。
こういった問題も含めて、最近は相続に関する情報がネットなどでも数多く出回っています。しかし、普段、お客様からご相談を受ける際も、「良く勉強しておられるな」と感心する事もありますが、中には表面的な理解で肝心な部分について勘違いしておられるケースもあります。何事も餅は餅屋、困った時は各分野の専門家に相談されるのが結局は近道だと思います。