2012年に日経リサーチが50歳以上の既婚者に対して行った相続に関する意識調査(以下、同調査という)によると、これまで相続財産を受取った経験があると答えた人は39%で相続経験者は約4割、残りの約6割の人は相続未経験者であることが解りました。
以前相続業務で、90代の男性から亡くなった奥様の相続手続きを依頼されたときに、そのご主人が「何分、こんな事(相続)は初めてなもので・・」と仰っていたのを思い出しました。
私もその時は、あれ?自分の親の相続とかは経験しているのでは・・?と少し不思議な気がしたのですが、戸籍調査を進めるなかで、その方は三男で、かつ、その方の親が亡くなったのは旧家督相続の時代の事であることに気が付きました。
旧家督相続の時代の相続は、その家の「戸主」である親が亡くなると、原則その家の次の戸主になる長男が全て総取りで相続するので、それ以外の兄弟が親から財産を相続するという事は原則ありませんでした。
普通、人間長く生きていると、その分、様々な事に関して経験が増えて行くものですが、こと、相続に関しては、そういう人生の大先輩でも未経験という事もあるのだなぁと、とても不思議な気持ちになりました。
平成21年中分の相続税の申告状況に関する国税庁発表の資料によると、相続財産の金額は1兆5,951億円で、その構成比は土地が51.3%(前年52.5%)、現金・預貯金等20.9%(前年19.7%)、有価証券12.5%(前年12.4%)の順となっており。
相続財産に占める不動産の比率は半分を超えています。ですから、相続の問題を考える時に不動産に対する理解と対策は非常に重要で、また、大きなポイントでもあります。
また、同調査によると、自己財産の内訳と価格を把握していますか?という質問に対して、18%が全て把握していると答えていますが、それ以外の82%は、大まかに把握、金融資産のみ把握、把握していない、などの回答で、自分の財産をちゃんと全て把握できていない人の比率がかなり多いことが解ります。
さらに、誰にどれだけ残すか、全て決めていると回答した人は、僅か6.1%で残りの93.9%は大まかに決めている、これから決める、相続人にまかせる、残そうと思っていない、などで、殆どの人が自分の財産をちゃんと全て把握しておらず、かつ、その継承についてちゃんと決めていないという事がわかります。
そして、相続対策の実施の有無に関して聞いた質問には、77.6%の人が対策を実施していないと答えており、その理由として、49.3%が必要性を感じていない、34.5%が何をしたら良いのか解らない、16.2%は時間が無いと答えています。
この結果を見ると、まず、元気なうちに自分の財産についてちゃんと把握すること、そして、財産の半分以上を占める不動産について良く理解して把握すること。これが、自分はどのような相続対策をすれば良いのかを考える上での前提になると思います。
特に、不動産は外見上健全な不動産に見えても、登記簿謄本の権利関係や公法上の制限、条例などとの関係、道路の問題や上下水道などライフラインの問題、隣地との境界や越境の問題など、その価値を確定する上でポイントになる点が非常に多く、それらを見過ごすと実際の売却価格が想定していた売却予定価格を大きく下回ってしまったり、最悪のケースでは、売りに出したけど買い手が付かないといった事もあり得ます。
そんな時、頼りになるのが不動産と相続の問題、両方に精通した専門家です。皆さんも早いうちから、いざというときに、そのような問題を相談できる相手が身近にいるかどうか確認してみては如何でしょうか。