内閣府の統計資料によると、平成27年時点で65歳以上の高齢者単身者世帯。いわゆるお一人様世帯の数は、昭和55年当時に比べて男性で約10倍の188万世帯、女性で約6倍の411万世帯となっています。増加比率では男性の方が多いですが、絶対数でみると女性の方が男性の倍以上の数に上ります。また、65歳以上の高齢者がいる世帯は2085万7000世帯、内、高齢者一人だけの「高齢単身主世帯」は552万4000世帯とされています。つまり、高齢者のいる世帯の4戸に1戸は高齢者単身のお一人様世帯ということになります。核家族化が進み、子供世帯との同居が少なくなる中、配偶者に先立たれて一人で暮らしているケースに加えて、近年は男女とも生涯未婚率が上昇していますので未婚の単身世帯というケースも増加しているのではないでしょうか。
そんな中、最近は単身の高齢者の方から将来の自分の葬儀やお墓の事、あるいは自分亡き後の自分の財産の相続の問題などについてご相談を受けるケースが増えています。例えば先日ご相談を受けたケースでは、数年前にご主人を亡くして一人になってしまった女性Aさんが相談者でした。Aさんご夫婦には元々一人娘がいたのですが、不幸にも若いころ未婚のまま病気でお亡くなりになってしまい、数年前ご主人も亡くなってしまった為、現在は長年娘のように可愛がって来たご主人の妹の娘Bさん(姪)が定期的に来てくれて親身になってAさんの身の回りの事などを助けてくれているそうです。Aさんは自分亡き後ご主人から相続した財産も含めて全てこの姪のBさんに託したいと思っています。
こういった事例で、例えば何の準備も無くAさんが亡くなると法定相続と言って法律(民法)の定めたルールに従ってAさんの遺産の分け方を決めるという事になります。この場合まず配偶者や子供が居るかどうかという事になりますがAさんの場合ご主人や子供は先にお亡くなりになっていますので、そうなると次は親が居るかどうかという事になりますが、このような高齢者の方の相続で親御さんがまだご存命と言うケースは稀ですからそうなると次はご兄弟、ご兄弟も先にお亡くなりになっている場合、ご兄弟の子(甥・姪)が代わりに相続するという事になります。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と言います。ただし、このAさんのケースで問題なのは現在親身になってAさんを助けてくれている姪がご主人側の親族だという事です。もし、何も準備をしないままAさんが亡くなった場合、Aさん側の兄弟や先に亡くなった兄弟の子(甥・姪)が法定相続人という事になり、ご主人側の親族であるBさんには相続権が無いという事になります。では、Aさんはどのような準備をしておけば良いのでしょうか?この場合、遺言が有効な対策になります。Aさんが自分の財産を全て姪のBさんに遺贈するという内容の遺言を遺しておけば兄弟には遺留分(亡くなった方の遺産について法定相続人が最低限主張できる権利)がありませんので、Aさんの望む通り遺産は全てBさんが受け取る事になります。また、遺言の中で自分の葬儀や埋葬供養などについてもご希望があれば財産を遺贈する代わりに、Bさんにお願いしておくと良いでしょう。
当然、これ以外にもAさんとBさんが養子縁組で親子になるという方法もありますがこれはBさんやBさんのご両親などの了承が必要になって来ますのでAさんの一存では出来ません。しかし、遺言は法律上「単独行為」といって相手方の了承が不要な行為ですので、遺言を書いておけばAさんの想いを確実に実現する事が可能です。しかし、遺言は法律上形式や要件が非常に細かく規定されていますので折角準備をしていても自筆の遺言などでは無効になってしまう可能性もあります。出来れば遺言は公正証書にして、原案作成のお手伝いをした専門家などを遺言執行者に指定しておくとより確実です。また、このようなお身内が居ないケースでは遺言で遺産を寄付したい慈善団体を指定したり、あらかじめ葬祭業者と契約を交して死後事務委任契約などでご自分の葬儀や埋葬供養について準備しておく事も可能です。
2017
24Jan
お一人様の終活問題
相談事例
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