みなさん一次相続と二次相続という言葉を聞いた事がありますか?例えば、ご夫婦と子供2人の家族で最初にお父さんが亡くなったときの相続が「一次相続」で、その後お母さんが亡くなったときの相続を「二次相続」と言います。
平成27年の1月1日から相続税の基礎控除額が4割引下げになったというニュースはみなさんもご存知だと思います。これによって、特に不動産評価額の高い首都圏等では、今まで相続税の納税には無縁だった人の中にも相続の事を気にしなくてはならなくなった人が少なからずいるのではないでしょうか。しかし、一次相続では、この基礎控除以外にも配偶者控除が1億6000万円ありますので、基礎控除プラス配偶者控除ということになるとかなり相続財産が多い事例でないと相続税の納税の対象にはなりません。
ちなみに、相続財産の総額が基礎控除や配偶者控除の枠内に納まるなどの理由で相続税の納税が必要なければ、相続手続きなども必要ないと思っている方が以外に多いのですが、相続税の納税が必要でも必要で無くてもご家族が亡くなれば必ず相続手続きは必要ですし、個別のケースに応じては、ご本人がお元気なうちに、いざ相続が発生したときに遺されたご家族が遺産の分け方を巡って争いにならないように予め「争族」対策を講じておいたほうが良いケースも沢山あります。
このような事を加味して考えると、たとえばお父さんが亡くなった一次相続においては、無条件に配偶者控除の適用を受けられるお母さんが全て相続するという事にした方が良いような気がします。しかし、ちょっと待った!という事で、本当はどうなのか?具体的な事例に落とし込んで考えてみましょう。
仮に、お父さんが亡くなって一次相続発生時の法定相続人が3人で、遺産総額が2億5000万円だとします。これを全て配偶者であるお母さんが相続する場合、本来、遺産総額の2億5000万円から基礎控除の4800万円を引いた2億200万円が相続税の課税対象ですが、お母さんは配偶者控除の適用を受けられますから、さらにそこから1億6000万円を引いた4200万円が課税対象となります。この場合の税率は20%で控除額は200万円ですから、一次相続でお母さんが負担する相続税は640万円ということになります。万一、この一次相続で子供たちが全て相続する場合の相続税負担額が4680万円であることを考えるとやはり一次相続で配偶者が全て相続するというのが最善の策のような気もします。
しかし、相続はこれで終わりではありません。そこで、お母さんが亡くなった時の二次相続も加味して考えなければなりません。お母さんを飛ばして、一次相続で子供たちが全て相続した事例では、もし、その後お母さんが亡くなっても相続税は0円です。(※一次相続発生前からのお母さん固有の財産は無いという前程で考えます。)ですので、一次相続と二次相続を合せたトータルの相続税負担額は4680万円という事になります。
それに対して、一次相続でお母さんが全て相続したケースでは二次相続で子供たちが負担する相続税は4680万円で、一次相続でお母さんが負担した640万円と合計すると5320万円となり、実は単純に配偶者が一次相続で全て相続するのが最善の策では無いと言う事がわかります。
では、このケースでは一次相続をどのような配分でお母さんと子供たちが分け合えば一番トータルの相続税負担額が少なくて済むのでしょうか?
実際に配偶者の課税対象相続額を0円から2億200万円まで、1000万円刻みでシュミレーションしてみると、相続税の課税対象遺産額が、一次相続でお母さんが1億円、子供たちが1億200万円、という配分が一番トータルの負担が安く済みました。比率にするとお母さんが約49.5%、子供たちが約50.5%という事になります。
このように、いくら配偶者控除があるからと言って、単純に一次相続で配偶者が全て相続すれば良いというわけでもありません。この機会に、我家の場合はどうなのか?そんな事を考えてみるのも良いかも知れません。