高齢化と核家族化が進み、高齢者の単身世帯が増加しています。それに伴って、一人暮らしの高齢者が家族としてペットを迎え、心の糧にするケースも増え続けています。
アニマルセラピーという言葉があるように、動物による癒やし効果は多くの人々が認めるところです。実際に、ペットと触れ合う事で、医学的にプラスの効果もあるそうです。
しかし、一方で、高齢者がペットを飼う場合、飼い主の高齢者が孤独死したり、老人ホームへ転居したり、病院へ入院したりすることによって、飼いきれなくなり、ペットが取り残されるという悲劇も現実におきています。
高齢者ご本人がお元気なうちは、ペットを飼うことによるプラスの効果の恩恵を受ける事が出来ますから、高齢者がペットを飼う事は良い事ずくめのような気がしますが、いざ本人に介護や医療行為が必要になったり、突然お亡くなりになったりした場合に、残されたペットの引き取り手が無く保険所などに収容されて殺処分になるというような悲劇も実際におきています。
最近は、飼育環境やフードの質の向上によりペットも長生きになりました、それに伴って高齢者がペットを飼育する場合、飼い主さん亡き後の問題も考えなければならなくなりました。例えば、家族同然の大切なペットに、自分の財産を全てあげたいと思っても、犬や猫などのペットは法律上権利義務の主体にはなれません。ですから、いくら遺言書で自分の財産を全てペットに相続させると書いてもそれが実現されることはありません。
では、どうすれば愛する家族同然のペットを自分の死後守ってあげる事が出来るのでしょうか?まず、民法の規定する、負担付遺贈や死因贈与、生前贈与などの方法で親族や信頼出来る第三者に大切なペットの行く末を託す事が考えられます。「贈与」の場合は遺贈者と受遺者の間で「契約(贈与契約)」を結ぶことになりますので、そもそも相手が承諾するかどうかで契約そのものの成否が問題になりますし、「遺贈」の場合は遺贈者の「一方的な意思」で成立しますが、実際には受遺者に拒否されてしまうとペットは行き場を失ってしまいます。
そんな時に活用したいのが、家族信託の制度を活用した、飼い主さんの死後もペットを守る信託スキームの組成です。新しい信託法によりこれまでの信託銀行などが扱う「商事信託」に加えて主として家族間の財産継承の手段として民事信託の活用が出来るようになりました。この民事信託の制度活用により、愛するペットの為に残したい財産を相続財産から切り分けることが出来ます。それにより、これまで民法の遺言規定で実現できなかったペットの為の財産継承のスキーム創りが可能になります。
相談事例参照 http://www.j-ssa.net/q06/
一般的に遺言書の作成は、自分の死を前程にする為、縁起でも無いと倦厭される傾向がありますが、将来の心配事を解消する為の手段として活用すればとても役に立ちますし、縁起でも無い所か、逆に今を活き活きと安心して生きる為のお守りになると思います。