最近、成年後見制度との併用や、遺言などに代わる財産承継のツールとして注目されている新しい制度で家族信託があります。家族信託とは平成19年に信託法が改正施行されてこれまで信託銀行などが行っていた商事信託に加えて運用できるようになった「家族型の民事信託」の事です。これまで日本で信託といえば、信託銀行などが運用する商事信託の事を指していましたので、個人間で信託!?と思われる方もいらっしゃるかも知れません。しかし、そもそも「信託」という概念の始まりは中世ヨーロッパで十字軍に従軍する兵士が自分の信頼する友人などに自らの財産を託し、不在の間、自分の代わりに自分の財産や家族を守って欲しいと依頼した事に端を発すると言われています。個人間で「信じて託す」正にこれが「信託」という概念のルーツなのです。ですから、この家族信託という新しい制度は極めてその信託の始まりの頃の概念に近いものではないかと思います。
また、この家族信託の制度を活用すると、親子などの親族間で財産を託して、将来の相続(争族)や認知症などのリスクに備えたり、遺言では出来ない数世代に渡る資産継承が可能になったり、自分亡き後、障がいなどを持つ配偶者や子の生活を支えたり、家族同然の愛するペットを守る仕組みを作ったりと、将来の様々な不安に対する備えを元気なうちに準備することが出来ます。このように家族信託は非常に画期的な制度ですので、これから将来の相続問題や自らの認知症リスクなどに対する対策を考えている方にとっては強い味方になると思います。
しかし、家族信託において信託財産に出来る財産と出来ない財産があるのはご存知でしょうか?まず信託出来る財産としては、金銭、有価証券(上場株式、非上場株式、国債など)、金銭債権(請求権、将来債権、貸付債権、リース・クレジット債権など)、動産(ペットなど)、土地、建物(不動産所有権、借地権など)、知的財産権(特許権、著作権など)などです。対して信託財産に出来ないものは、生命、名誉、債務、連帯保証(いわゆるマイナス財産は信託できません)、一身専属権(生活保護受給権や年金受給権)などです。
※債務は信託不可ですが、債務引受は信託可能です。債務引き受けをすることで、実質債務を信託することと同じ状態にすることはできます。