近年、相続問題が注目される中、様々な相続対策にまつわる情報が紹介されています。その中の一つに高層マンションの上層階を購入するというものがあります。これはどういう対策かというと、通常、マンションにかかる固定資産税は、床面積が同じなら、下層階でも上層階でも同じです。しかし、分譲時の販売価格や中古市場での流通価格は、上層階と下層階では倍以上の大きな差になる事も多いものです。マンションの上層階を購入する相続対策はこの点に着目して相続財産の評価額を圧縮しつつ、賃貸で貸す、あるいは将来的に売却する場合でも比較的安心な資産であるという所が富裕層の間でこの対策がよく利用されて来た所以ではないでしょうか。
例えば、1億円の現金や金融資産が相続財産の中にあったとすると相続の時にほぼ額面通りの相続税評価額という事になりますが、1億円のマンションを購入した場合その相続税評価額は土地の持分については路線価格、建物については新築で購入した時の建物価格の30%から50%程度の評価となります。仮に新築購入時の1億円の内分けが土地4000万円、建物6000万円とすると購入したマンションの相続税評価額は土地約3600万円程度、建物約1800万円から3000万円程度の評価となります。
そうすると、本来お金のままで持っていれば1億円の評価の財産がタワーマンションの高層階を購入した事で4割近く圧縮できたということになります。さらに、購入したマンションを賃貸で他人に貸すと貸家建付地といって、他人が住んでいるので所有者が自由に用途を変更したり処分したり出来ず、利用に制約を受ける事になったという事で、さらに評価額が下がります。また、購入に際して金融機関から借り入れをしてマイナスの財産を作る事による相続財産の圧縮効果もあります。
このような理由から近年富裕層のタワーマンション買いが良く行われて来たのではないでしょうか。しかし、近年の判例で、父親が亡くなる直前に父親名義で購入した2億9,300万円のマンションを、父の死後相続税申告では5,802万円として評価。その後同マンションを2億8,500万円で売却したケースで「不動産の評価は、原則として評価通達(路線価などによる評価)
により評価すべきであるが、特別の事情がある場合は、 他の合理的な評価方法によることが許される。」として相続税申告時の5,802万円という評価額を否認された事例などもあります。
また、先日、高層階と低層階で販売価格が大きく違う高層マンションにおいて、固定資産税評価額が同じというのは公平性を欠くとして上層階に行くほど課税評価額も高くしようという税制改正を政府与党内で検討しているというニュースも流れてきました。法令や制度などは国が作る側ですので、今は合法的に節税できる良い方法だというものがあっても、抜け穴をふさぐ様に制度自体を改正されてしまえばそれまでという所もありますし、逆に新しい制度の活用で恩恵を受けられるケースもあるでしょう。その意味でも常にアンテナをはって情報収集をしておくことは大切な事だと思います。
余談ですが、タワーマンションって何階建以上?と思って調べてみましたが現在、明確な定義はない様です。一般的には高さ60メートル以上、または20階以上のマンションをタワーマンションと呼んでいるようです。もし、今後上層階に行くほど課税評価額を引き上げる法案が成立したら急に19階建てのマンションが増えるかもしれませんね。